2013/08/28

二つ目の山も無事下山!

 ここ数年8月には「軽井沢国際音楽祭」か「秋吉台の夏」のどちらかに参加していますが、両方に参加したのは久しぶり!暑かったせいもあってかなり大変でしたが、なんとか無事に終えることができました。

 「秋吉台の夏」は秋吉台国際芸術村という素晴らしい施設で毎年8月に行われている現代音楽の音楽祭です。今回も作曲家講師陣によるレクチャーやレッスン、演奏家によるフリーディスカッションなど盛りだくさんの内容で、毎晩開かれるコンサートは首都圏でもなかなか聴けないプログラムが満載!私の担当はフリーディスカッションとコンサートだけでしたが、とても充実した毎日に受講生の皆さんが生き生きしていて、大変な思いをして準備した甲斐があったというものです!

 芸術村には素晴らしい響きのホールがあって、今回私がそこでのコンサートにと選んだ作品は、ホールの響きに合いそうなミュライユの「別れの鐘と微笑み」というピアノソロ。この作品はミュライユがメシアン追悼のために書いた小品で、大小様々な鐘のモチーフが何重にもなって響く美しい作品です。予想通り芸術村のホールに鐘の響きが広がって、弾いていても気持ち良かった!他にイサン・ユンのヴァイオリンとピアノのための「Gasa」、カーゲルの声と器楽(今回はテューバ・ヴィオラ・ピアノ)のための「Rrrrrrr...」を演奏しました。「Gasa」はイサン・ユンのどの作品にも言えることですが、内容的にもアンサンブル的にも非常に厳しい作品です。ものすごい緊張感が必要とされるので、それがうまくいけば迫力のある演奏に、失敗すればヒステリックなだけの演奏になってしまうのですが、今回はうまくいったんじゃないかな?カーゲル作品の演奏には「調律のあっているピアノ、または調律の狂っているピアノで」という指示があり、今回は調律していなくて若干ミョンミョンと変な音がしているピアノを使いました。4曲目は蒸気機関車での旅の歌で、汽笛や機関車の駆動音をCDで流しながら、楽器のリペアを本業としているスタッフさんに急ごしらえで作っていただいたベルを鳴らしたりと、目にも楽しかったのではないかと思います!

 他にもたくさん興味深いプログラムを素晴らしい演奏家の皆さんが演奏されましたが、今年の目玉の女声合唱団「暁」のコンサートは吸い込まれそうに美しい前半のプログラムと、とっても楽しい後半のプログラム、どちらも本当に素晴らしかった!今年のテーマは「声」ということでしたが、やはり人に一番うったえるのは人の声なんだなと改めて思いました。「暁」には声楽専攻の方だけでなく器楽や楽理の方もいらっしゃるそうで、私もあんな風に歌えたら楽しいだろうなと思いました。

 この音楽祭に私は留学中から関わらせていただいていて、初参加からなんと今年で10年目!そこに関わる方々とはもう家族のような感じで、私にとってはとても居心地の良い音楽祭です。現代音楽は一般のお客様には馴染みがないし、場所柄首都圏の現代音楽ファンも呼びにくい。さらに地元でも車がないと辿りつけないような立地条件で、良くも悪くもこじんまりとしていますが、ずっと続いていって欲しい音楽祭です。ピカソもサティも生前は評価してもらえなかったように、時代の最先端を行く芸術というのはなかなか受け入れてもらえません。それでも私たちは続けていきます。未来の音楽界のために、というのもあるけれど、結局のところ、自分が好きだから。

 写真は芸術村のお庭の一角。最近はガーデンウェディングなんかも行われているようで、色とりどりの花が咲き乱れていました。整然と植えられているのも綺麗だけれど、イングリッシュガーデンも素敵です!

2013/08/17

一つ目の山を下山!そして二つ目の山へ・・・

 軽井沢から帰ってきました!8日から15日までの1週間ですっかり体は現地の気候に慣れ、そこでさえも暑く感じていたのですが、自宅に戻ってきて軽井沢がどれだけ涼しかったか身に沁みます。一時の溶けてしまいそうな暑さでないとは言え、湿度が高いのは辛い!

 今年軽井沢国際音楽祭は例年より1週間ほど早く始まったため、今までとは違うことがいろいろとありました。まずは講習会会場と宿泊施設がいつもと違う施設になったこと。今までは受講生たちの宿泊施設・講習会場・講師陣の宿泊施設がそれぞれ別だったため、その移動にマイクロバスを使うなど結構苦労していたのですが、今年は受講生の宿泊所内にレッスン室を用意してもらえたので、受講生達の移動の負担がなくなりました。ただお盆前後の軽井沢はものすごく混むので、ちょっと離れたホテルから通う先生方は大変だったみたいです。「大変だったみたいです」と言うのは、私も受講生と同じところに泊まっていたから。ホテル側の手違いで一人だけそこの施設に泊まることになったのですが、おかげで朝も夜もゆっくりできたし、街中よりさらに涼しい山の上だったので、エアコンいらずで過ごすことができました。

 さらに時期がずれたことでいつもより受講生の人数が少なく、余裕をもったスケジュールでレッスンができたこと、空いた日に受講生とピアニストで室内楽に取り組めたことは、とってとっても良かったと思います!私もミヨーのクラリネット・ヴァイオリン・ピアノのための「組曲」というトリオを演奏しました。クラリネットクラスにはベテランピアニストの出羽真理さんも伴奏者として参加されていて、出羽さんはベートーヴェンのクラリネット・チェロ・ピアノのための「町の歌」というトリオを演奏されました。チェリストは聴講で参加していた高校生で、1日で曲を仕上げるとか室内楽を演奏するなんてまだ経験したことがないくらい若い子でしたが、出羽さんのサポートのもと、とっても音楽的に演奏していました!当初室内楽に関してはレッスンだけの予定だったのですが、同じ施設に泊まっている一般のお客様のディナータイムにゲリラライブを行ったりと、オプションとしてはかなり充実していたと思います。その講習会も14日の受講生コンサートで幕を閉じ、みんなが数日間でちょっとずつ成長したのを演奏を通して感じることができて、とても嬉しかったです!写真は受講生コンサートの会場のユニオンチャーチ。昨年まではステージの奥に壁があったのですが、建てた当時のままの姿に戻し、窓から光が差す気持ちの良い会場となりました!

 そして14日からはメインイベントのコンサートが大賀ホールにて開かれ、私も15日の「パリ・復興」と題した室内楽コンサートに出演しました。プログラムは二重奏から七重奏までとバラエティに富んでいて、そのどれにもピアノが入るという豪華さ!でもどの曲も非常にピアノの負担が大きいため、ピアニスト3人で分担して演奏しました。私が演奏したのはラヴェルのピアノトリオで、共演はヴァイオリン奏者の小林美恵さんとチェロ奏者のエマニュエル・ジラールさん。曲は4楽章形式で、どの楽章もこれでもかというほどラヴェルのエスプリが効いている美しい作品ですが、お互いのパートの拍子が違っているなど、非常にアンサンブルが複雑に書かれているため、奏者同志が信頼し合ってお互いのパートを知り尽くしていることが求められます。でも私とジラールさんは初共演な上、忙しい演奏家が合わせをできるのは多くて2回。かなり厳しい条件に、個人的には全然余裕がなかったのですが、小林さんとジラールさんが温かく支えてくださり、なんとか無事に演奏を終えることができました。いろいろ反省が残る演奏ではあったけれど、本当に愛してやまない作品なので、これからも回数を重ねてもっともっと自分のものにしていきます!

 さて、明日からは今夏二つ目の山登り。山口県の秋吉台国際芸術村にて開かれる、現代音楽セミナー「秋吉台の夏2013」に参加します!

《現代音楽セミナー&フェスティバル 秋吉台の夏2013 始原の声・未聴の声》

メイン・コンポーザー:湯浅譲二
コンポーザー:田中吉史
ゲスト・コンポーザー:木下正道・徳永崇・成本理香・若林千春
バリトン:松平敬
フルート:Mario CAROLI・村上景子・若林かをり
テューバ:橋本晋哉
ヴァイオリン:松岡麻衣子
ヴィオラ:般若佳子
ピアノ:中山敬子・藤田朗子
合唱指揮:西川竜太
合唱:女声合唱団「暁」(ピアノ:篠田昌伸)
ゲスト:防府少年少女合唱団

8月19日(月)「一緒に体験しよう-フルートの新たな世界!」ワークショップ
8月20日(火)「現代音楽・低音の魅力をフル体験!」ワークショップ
8月21日(水)「『秋吉台の夏 2013』講師陣によるガラ・コンサート」お話付コンサート
8月22日(木)「合唱団コンサート」お話付コンサート

日時:8月19日(月)~22日(木) 各コンサートとも19時半開演(19時開場)
会場:秋吉台国際芸術村ホール(754-0511 山口県美祢市秋芳町秋吉50番地)
料金:19日(月)~21日(水) 一般1000円 FN会員800円 高校生以下無料
22日(木) 一般1500円 FN会員1200円 高校生以下無料
お問い合せ・受講申し込み:「秋吉台の夏 2013」事務局 河添達也
               (0852-32-6317 kawasoi@edu.shimane-u.ac.jp)
コンサート・チケット予約:秋吉台国際芸術村
               (0837-63-0020 http://www.aiav.jp

 私は21日のガラ・コンサートにて、イサン・ユンのヴァイオリンとピアノのための「GASA」、ミュライユのピアノソロのための「別れの鐘と微笑み」、その他カーゲルの作品などを演奏します!現代音楽というと訳が分からないと思われがちですが、ちゃんとベートーヴェンやドビュッシーを通過してきた音楽が根底にあります。確かに難しい響きのものもありますが、楽しかったりかっこいい作品もたくさんあるので、ぜひぜひ聴きにいらしてください!

2013/08/06

いよいよ軽井沢へ!

 ずっとすっきりしない天気が続いていた関東ですが、いよいよ明日からは暑くなるようです。しかし私は爽やかな軽井沢へ出発します! 

 軽井沢国際音楽祭のコンサートは14日からですが、その前にアーティスト陣による講習会があり、私もその伴奏をお手伝いさせていただきます。今回はヴァイオリン・クラリネット・打楽器クラスが開設され、音楽と濃密に向き合う数日間を過ごし、最後にはそれぞれの成果を発表するコンサートもありますが、お勉強だけではつまらないので、中日にはバーベキューなどのイベントもあるんです!志を同じくする若い音楽家にとって、この講習会が一生の宝物になるよう、私達講師・ピアニスト・スタッフがフルサポートしますよー!

 そして15日のコンサートでは、私はラヴェルのピアノトリオを演奏します。この曲は母や妹と遊びで弾いた思い出深い曲で、それを素晴らしい共演者と演奏できる喜びを噛みしめながら練習してきました。得も言われぬ美しい和声と、ラヴェルの母親の出身地バスク地方の独特なリズム、3人で演奏しているとは思えない程のスケール!何もかもが特別で大好きな曲です!15日には他に、プーランクの六重奏やストラヴィンスキーの七重奏など、ピアノが入った大編成の作品があり、ピアノファンはもちろん、室内楽好きには堪らないプログラムになっています。ぜひぜひ皆様お誘いあわせの上、聴きにいらしくてください!


《 軽井沢国際音楽祭2013 パリ・復興 》

フルート:宮崎由美香
オーボエ:渡辺克也
クラリネット:Emmanuel NEVEU・横川晴児
ファゴット:CHOE Young Jin
ホルン:福川伸陽
ヴァイオリン:小林美恵・長原幸太
ヴィオラ:鈴木康浩
チェロ:Emmanuel Girard
ピアノ:出羽真理・野平一郎・藤田朗子

曲目:
ラヴェル/ピアノ三重奏曲 イ短調
プーランク/ヴァイオリンソナタ
ストラヴィンスキー/七重奏曲
プーランク/六重奏曲       他

日時:8月15日(木) 16時開演(15時半開場)
会場:軽井沢大賀ホール (389-0104 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東28-4)
軽井沢国際音楽祭ホームページ:http://kimf.net/