ここのところスコールのような大雨がピンポイントで降ることが多いですね。先日のライブの日もまさにそういう天気で、そんな中たくさんの方に聴きにきていただけて大変嬉しく思います。どうもありがとうございました!
今回のライブは、共演のクラリネット奏者、山根孝司さんの恩師であるボイケンス先生の追悼のため企画されたものでした。ボイケンス先生は長く闘病生活を送っていらっしゃったのですが、「演奏できなくなるくらいなら生きていも意味がない。」という強い意志のもと、安楽死を選ばれたそうです。
日本で法的に認められていない安楽死は、残される者をとても複雑な気持ちにさせます。でも、会いたい人にはきちんと会って最後のお別れをして、苦痛を感じずに逝くというのは、理想の形でもあるかもしれません。それが法的に認められて人々の理解を得ているのは、個人を尊重する歴史があるからこそなのでしょう。
そんな大事なライブだったにも関わらず、当日は今までに経験したことがないハプニングが発生してしまいました!実は今回のピアノはこの春に低音の弦が切れて新しい弦を張ったそうなのですが、そのキーの音程がかなり狂った状態になっていて、当日リハーサルを始めてみたらほとんど四半音(半音のさらに半分の音程)低くなっていたのです。慌てて知り合いの調律師さんに連絡したものの、専門の工具がないと音程を直すことはできず、しかも運の悪いことに、今回のプログラムでは8曲中5曲がその音から始まり、曲中でも何度となく使用するキーだったため、急遽オクターブを変えたり、その音を弾かずにどうにかやり過ごしたりと、非常に気を使うことになってしまいました。おかげでリハーサルは全然集中できなかったのですが、どうあがいても仕方がないことなので、本番は腹をくくってできるだけの対応をしました。楽譜にはその音だけ青いマーカーで印をつけていたので、私の真後ろの席のお客様には真っ青な楽譜の書き込みが見えたのではないかと思います。これまでにも鍵盤が下がったままだとか、弦が切れたままだとか、グランドピアノの脚が1本折れてて斜めに傾いているとか、いろんなピアノを弾いてきましたが、今回のは今までで一番しんどいハプニングでした。
でも、山根さんの演奏は素晴らしく、それに自然と引っ張っていただけて、音楽的にはとても集中して演奏できたと思います。たまに音程の狂ったキーに触ってしまって、出てくる音の気持ち悪さにびっくりしてミスをすることもありましたが、こういうハプニングを乗り越えて少しだけ成長できたような気がします。かと言って、もう一度音程が狂ったピアノで本番を迎えたいかと聞かれれば、絶対にノーですが!
写真はある大学の中庭に放置されていたテューバ。長年雨風にさらされて真っ黒で、まるで古老のような渋さを感じさせます。きっと音はもう出ないだろうけれど、このままオブジェとして皆に愛されるのもいいし、潔く金属の塊に戻るのもいいのかなと、なんとなく人になぞらえて考えてしまいました。
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