2011/03/02

匂いと記憶

 昨日料理に使ったスパイスはフランスでよく使っていたもので、かなり独特な匂いがします。これらのスパイスの匂いを嗅ぐと、急にフランスの台所に立っているかのような錯覚に陥ります。

 匂いと記憶は関係性が深いというのはよく聞きますが、それまですっかり忘れていたようなことでも、まるでその空間に引き戻されたように、感情までありありと思い出すことがあります。フランスでは何度も引越しをしたせいで台所のイメージもいくつもあるのですが、写真のスパイスの香りを嗅いで思い出すのは3件目。パリ音楽院の受験の準備をしていた時に住んでいた家で、まだ友人も少なく時間はたっぷりあって、ただひたすら一人で勉強していた時期です。当時通っていた語学学校の友人がうちで料理を作ってくれたことがあったのですが、その時にその子が置いていったのがこのスパイスで、勉強の傍らよく知らないスパイスをどうやって使ったものかと試行錯誤しながら料理したのを思い出します。この香りを嗅ぐだけで、その時の不安や寂しさや、でも夢に向かって前進しているんだという充実感や、その当時起こったいろんなことが蘇ってきて、匂いって本当にすごいと思います。

 実は私は暗譜が苦手です。暗譜というのは曲をまるごと記憶することで、ピアニストが独奏をする場合、現代曲でもない限りは楽譜を見ずに演奏するのが通例となっているのですが、ブログを書いていて、もしかしたら何かの香りと関連付けると上手くいくかもしれないと、ふと思いました。今度ソロを演奏する時には試してみようかな?その際はスパイスじゃなくて香水くらいにしておかないと、会場で記憶を戻せないかもしれないから要注意ですね。

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